出会いドットコム

 わたしは行きつけにしているらしいカフェにいる。非常に広く開放的で、明るい店である。
 そこでいつも見かける男性がいる。三十代の後半か四十になっているかもしれない。毎度スーツ姿で、ひょろりと背が高く、なんだか誠実そうな人である。なんの仕事をしているのか知らないが、わたしが行く時間にはいつもコーヒーを傍らに置いてパソコンに向かって作業をしている。

 ある日、わたしはどういうわけか彼のために写真を撮ることになる。店内の風景とか彼の作業しているパソコンとかの写真を撮るのだが、それがきっかけでわたしたちは話をするようになり、わたしは毎回彼のために写真を撮ることになった。
 しばらくして、わたしたちがまたカフェで会うと、彼はだしぬけに「出会いドットコム」なるサイトに登録してみないかとわたしに云う。自分と結婚する前提で登録してほしいというのである。わたしは承知し、ついでに彼が遠方に住んでいて、出張で東京に来ているらしいことを知った。

 こうしてわれわれの遠距離恋愛がスタートするのだが、わたしたちは互いを知る方法として、アマゾンでお互いに好きな本を買って送りあうということをやるようになる。彼はマンガ好きで、いろんなマンガを送ってくる。送られてくる荷物についている彼の住所は「讃岐市」である。

 この夢のなかで、わたしはようやく自分にぴったりの男が見つかったと思っている。これはわたしの精神にたいへんな安心をもたらしてくれたらしく、ずいぶん長いこと気分がよかった。

 出会いドットコムというサイト名が面白い。アマゾンで好きな本を送り合うのもよい。遠距離恋愛中であるのもよい。いきなり熱愛の関係になるより、これくらい微妙な距離ではじまったほうがよい。ほんとうの意味でパートナーになる男というのは、おそらくそういうものであり、その人との関係は、多くの時間をかけてできあがるものだろうと思う。

 ところでわたしは香川県にはなんのご縁もないが、香川県の住所がよく夢に出てくる。こういうなんだかよくわからないことがあるので夢は面白く、何十年も経ってから、あれはああだったのかなと思えばそれはそれで面白いし、死ぬまでなんだかわからなかったというのも、それはそれでよいと思う。