ある兄弟の物語

 これはある白人兄弟の物語で、登場人物はスーツを着た上流階級の人間なのだが、映像全体になんとなく西部劇の趣がある。

 主人公は太った気弱な中年男である。金持ちで、大きな屋敷に住んでいるが、独身で人づきあいもあまりなく、孤独な人生を送っている。彼の家には、中年の痩せ細った、猫背で陰気な使用人がひとりおり、めったに口をきかない。ほかに、意地の悪い高慢な叔母やその夫、その他の親族などが住みついていて、本来は主人公のものである財産を食いつぶしている。だが主人公は気が小さく、彼らになにも云い返せないし追い出すこともできない。いつも汗をかいてふうふう云っているだけなので、親族はみな彼のことをばかにしてやりたい放題である。

 実はわれらの主人公には双子の弟があったが、小さいころに事故死していて、それが主人公の憂鬱や引っ込み思案に拍車をかけているのである。だがわれらの主人公は、一見気弱で愚図だが、実は心にとある用意周到な、長期的な計画を抱いており、人に気づかれずに着々と実行に移していた。というのも、彼は弟が事故で死んだのではなく、意地悪な親戚たちに殺されたことを知っていたのである。それで、何十年もかけて彼らに復讐する計画を立てていたのだ。

 やがてその復讐劇の終わりが来る。その日、彼は親戚と一緒に街の広場のようなところに馬車でやってくる。そして長年溜めこんでいた怒りを爆発させ、貴様らのやったことはみんな知っていると云う。親戚一同ははじめ鼻白んだような様子で、こいつは急になにを云いだすのかというような顔をしている。ところが、主人公が一緒に連れてきていた使用人の男を指さし、あれは自分の弟だ、彼は実は生きていたのだ、と暴露するのである。