龍のしっぽ

 今日は季節外れの暖かさで、よく晴れていたので散歩に出たが、目の前の雲が天に昇る龍のように、細いひと筋を描いて上へ伸びていた。おまえは世界を飲みこみ、わたしも世界を飲みこむだろうとわたしは龍に向かって云った。おまえの体の外に世界はなく、わたしの体の外にも世界はないだろう。わたしのこれまで見てきたものは、すべて幻であった。むろん、これから見るものも大方は幻に過ぎないのだが、わたしはそのことを知っている、わたしはおまえのしっぽをつかんでいるのだと、わたしは龍に云ったのである。
 その雲の龍は笑いながらすぐに消えてしまったが、わたしも、わたしのこの認識も、わたしのつかんでいる龍のしっぽも、なにかそのようなものに違いなかった。

 鈴木大拙の本から龍が生まれた。筆でいたずら書きしたものである。ある禅師が、「わが杖は龍になり、全宇宙を飲みこんでしまった」といったそうである。わたしはこの意味がわかるように思う。