オイルパステル

 わたしはどうやらユング派の学校へ入学することになったらしい。
 その日は入学式があって、中学校のものらしい制服を着て、中学校の体育館のようなところへ行ったが、その入学式が一風変わっていて、一種の通過儀礼のようなのである。

 体育館の中には、円形に学校の机のようなものが並べられていて、わたしはその円の中を歩き、真っ白なノートに言葉を書いて蛍光ペンで線を引くのだが、その蛍光ペンというのがひとり3色3本までしか持つことができず、しかもどの色を持つか自分で選ぶことができない。ランダムで選ばれた教官らしき人からもらうのである。
 わたしの当たった教官は50歳くらいの眼鏡をかけた女性で、その人は黄色と黄緑とオレンジの蛍光ペンをわたしに与えてよこした。だがその黄色と黄緑というのがえらく識別しにくくて、オレンジもなんだかやけに黄色っぽく、実質蛍光黄色の一色しかないようなものである。わたしはなんとなくがっかりして、ずいぶん損をしているような気がしたが、それがルールであるから、仕方なくその3色で体育館の中を回った。

 その儀式が終わると、ひとりずつノートをさっきとは別の教官らしき人に提出する。これもどうやら自分では選べず、ランダムに選ばれるらしい。わたしの教官はさる女優だったが、非常に落ちついていて親切で、親身になって話を聞いてくれる人だった。
 女優はわたしのペンの3色があんまり似通っているのをかわいそうに思ったのか、別の色をあげますといって、わたしのノートを取り上げ、別のまっさらなノートと、ピンクのペンと、細長いスティック状のパンをノートにはさんでくれた。彼女は、パンの色を一色には普通数えないけれども、でもあなたはお腹がすいているみたいだし、パンの色はとてもいい色だから、というようなことを言った。ノートの表紙には、パンの写真の切り抜きが貼ってあって、コラージュ作品みたいに見えた。

 わたしは細長いパンを挟んだまっさらな白いノートと、ピンク色のペンとを持って、晴れて儀式を終えて体育館を出てゆくことになった。女優は別れ際に、ほかの色もちゃんと見つかりますから安心してくださいね、と言った。

 先日からオイルパステルという画材が気になっていた。どうも気になるので、先日アマゾンで安いのを試しに購入してみたが、それが今日来た。

 西洋のオイルパステルは、ピカソの求めに応じて作られたらしいが、なんとなくわかるような気がする。クレヨンみたいで、ぐるぐると子どものように描ける。子どもがはじめて手に持つ画材はたいていクレヨンかクーピーのようなものだと思うが、あれは子どものまだ不器用な手でも、ぐるぐると楽しく円を描いたり、ぐちゃぐちゃと塗り重ねて色を混ぜたり、線を引いたり点々を打ったり、実に楽しく遊べる。オイルパステルはなんだかその感覚を思い出させてくれる。わたしもぐるぐる楽しく遊んだ。そうしてできたのがこれである。

 これは夜空を飛んでいるセラフィムで、6枚の翼をもった天使の一種である。なぜかは知らないけれども、わたしはこのセラフィムがとても好きである。なんとなくこういうものがいつもわたしの周りにいる気がして、気づくとこういうものを紙の空いている端っこのほうに書いたりする。これはとても楽しんで描いたので、とてもよい絵である。