家の中

 父が屋根の雪下ろしをはじめたので、わたしも屋根の上にのぼった。長いはしごを登ってゆくのがとにかく怖いので、なんだかおっかなびっくり不器用にのぼったのだが、それでもなんとか屋根の上に上がることができた。屋根の上から見ると、あたりは非常に開けていた。別になんだということはないが、はじめて自力で屋根の上にのぼったこの出来事は、なんとなく印象深かった。わたしの家は、別にそんなに広い家ではないが、わたしが見たことのない多くの景色を、まだまだたくさん隠しもっているように見える。

 そういえば先だって、わたしが寝室にしている和室で、どうも空気が乾燥するので加湿器を炊いたら、その湿気が風呂場へ行ってしまったらしくて、風呂場の天井から水がしたたっているというので、母が仰天して父を呼んだ。そうしたら父は、わたしが寝室にしている和室の押し入れを開けて、その中へするする潜っていってしまった。その押し入れの天井には穴が開いていて、そこから天井裏へ行けるらしいのだが、わたしはそんなことをそのときまで少しも知らなかった。

 こんな調子なので、わたしは死ぬ間際になっても、まだこの家に知らないところがあって驚いたりおどかされたりするのではないかという気がする。どうもこの家はときどきわたしを驚かすくせがあり、わたしがどうせ長年住み慣れた家だなどと思い上がって、この家に対する興味や新鮮な感情を失うことを許さないようである。