友だちの道化師

 自分の分析家とオンラインで話しているのだが、分析家にはなにやら提案があって、わたしに黒板のようなものを向けてきて、今日のスケジュールを書いてよこした。それによると、わたしはその日セッションの前に、分析家のやっているワークショップだか、身内の集まりだか、ちょっと忘れてしまったが、そういうものに参加したらどうかというのである。

 それでわたしは出かけていった。会場は学校の体育館のようなところで、中を覗くと、真正面に楽器を手にした人たちが大勢いて、みんなでなにかの曲を演奏している。分析家はその人たちの前にいたが、会場の後ろのほうを覗くと、そっちにはフルートだのクラリネットだのを手にして、演奏に参加するでもなく、かといって部屋から出ていくわけでもなく、なんとなくそこにいるというような道化みたいな格好をした人たちがいた。
 カラフルな服を着た道化のような人たちは、しかし見ていて妙に胸の悪くなるような感じがし、その光景を見た瞬間、わたしは絶対にこんなものに参加なんぞするものかと思い、くるりと背を向けて体育館らしき会場から立ち去った。

 自分の分析家が夢に出てくるときは、たいていなんだか興味深い夢になるが、夢の中でこういう拒絶反応を示すということは、よくあるようで実はなかなかないので、そういう意味でも面白い夢である。

 この演奏に参加しているわけでもなく、かといって部屋から出て行くわけでもない道化師のような人たちのひとりと、わたしはいまとてもいい友だちなのだが、このころの自分は、このぼんやりした、なにをしているのかよくわからない人たちのことを受け入れられなかったものと思われる。

 わが友だちの道化師は、ハーモニカを吹くことができ、ジャグリングができる。無口でのっぽで、心やさしいが、ぼんやりで少しのろく、いつも着ている緑色の上着には大きな穴が空いている。
 ところがその穴はただの穴ではなくて、どこか行きたいところを念じてその穴をのぞくと、穴を通じてそこへ行くことができる。なぜそんなどえらい穴が空いたのか、道化師はよく覚えていないらしいが、このすてきな穴を利用するのにはひとつだけ条件があって、穴の先で手に入れたものを元いた場所に持って帰ってくることはできないのである。それをやると穴がひどく機嫌をそこねて、ひょっとすると腹立ちのあまりふさがってしまったりするらしいのである。
 ところが友だちの道化師はなにしろぼんやりなので、よく行った先でポケットの中にものをつっこんでそのまま忘れてしまい、たびたびえらい目に遭うらしい。それでわたしたちはどこかへ一緒に出かけて帰る段になると、いつも道化師の上着やらズボンやらを逆さにして振って、なにか見落としがないか確認することになっている。そういうわたしもずいぶんうっかりなので、わたしも服を脱いでみんな振ってから帰ることにしている。靴の中に小石が入っていたり、ポケットにカエルがいたりして、なかなか油断ならないのである。

 だがこの夢をみた当時、この実に愉快で楽しい仲間の道化師に対して、自分が嫌悪を感じていたのだからおそれいる。この道化師と友だちになるのに、それから三年ほどかかったのである。