2020-12

役に立たない男

フレンチコートに中折れ帽をかぶった男たちが、壁を向いて一列に並ばされている。夢はそのなかのひとりの男の独白からはじまる。「奇妙なことだ。あの男がこのことに気がつかないとは」 男たちは、ときどき手を上げたり下げたりする。いま背後にあるものが、...

書き手の限界

作家のAとタレントのBが、文学賞の最終審査を行っていた。彼らは応募原稿のレイアウトがことごとく正しくないのに怒っており、どの作品も求められている体裁を守っていないという。守っているのはこの作品くらいだと言って、彼らはわたしの原稿をとりあげた...

卑屈な者

わたしはスーパーの警備員のようなことをしている。郊外にあるような広いスーパーマーケットで、わたしが巡回していると、どうも気になる中年の男がいたので、声をかけた。 男には別に不審な点があったわけではない。万引きするようなしぐさをしていたわけで...
雑記

詩人の魂

神はなぜ詩人の魂をつくったのだろう。たぶん、退屈だったからだ。自分を見て、自分に話しかけてくれる人が欲しかったのだが、祈りをささげる人だけではちょっと足りなかったのだ。神と同じ笑いを笑い、神と同じ風の中で、ぐるぐる回って遊んでいるようなのが...