もやのようなもの

 なにやら灰色と黒の薄暗い光のようなもやのようなものを見たが、詳細は覚えていない。

 夢を記録しろなどと言われたことがなかったので、夢を覚えているというのも最初のうちはずいぶん難しく感じられた。だいぶたってから、枕元にメモ用紙と鉛筆を置いて眠るということを思いついて、なんとか忘れずに書きとめることができるようになったが、夢を見る力とか覚えている力というものは、最初からふんだんにあるわけではなくて、試行錯誤したりそれなりに苦労したりしながら、なんとかしようとするところに意味があるように思われる。

 こういうことが面倒だと思えば、夢のことなど放り出して気楽に生きればそれでよいのだが、どういう因果かわたしは夢の記録をつけつづけることのほうを選んだので、しかし夢を把握したりその意味をとらえたりすることについては、我ながらずいぶん苦労したように思うし、いまもすんなりできるというわけにはとてもいかない。