夢の中で、わたしは母と実家の物干し台の前にいた。父の意向で、家の周りはみんな芝生で覆われているので、物干し台も青々したビロードのような芝生の中にある。風が吹くたびに、芝生は艶めいて揺れる。草原のなかにいるようだ。
わたしたちのまわりをハチがぶんぶん飛んでいる。スズメバチだ。クマバチもいる。わたしはハチが怖い! でもクマバチの軍艦のような羽音を聞くと、わたしは恐れおののきながらもうっとりする。一匹のスズメバチが、わたしの服の袖の中へ入りこんできた。わたしは悲鳴を上げ、あわててハチをとり出そうとした。おそるおそる袖の真ん中あたりをつまむと、確かにそこにハチがいた。でもそれは、すでに死んでいて、まるで灰かなにかを固めてあったかのように、指でつまむとぼろぼろと黒くくずれてしまった。
子どものころ、この物干し竿の真ん前で、わたしは太ももをハチに刺されたことがある。ズボンの中にハチがいたらしいのだ。小さなミツバチだったが、その痛かったことといったら、いまでも思い出すと痛くなるほどだ。わたしはなによりも脚に脂肪がつきやすいが、どうもこの出来事とわたしの脚の脂肪とは、無関係でないような気がしている。
考えてみたら、これは実に性的なメタファーではないか。そしてそのくせこの風景は風が優しく吹いていて、日向の匂いがするのだ。
いま書いていて大手拓次のこの詩を思い出した。
をんなよ、
おまへのももをあをく化粧してねむれ。
をんなよ、
おまえへのももをうすい絹でいたはつてねむれ。
それこそは此世で最もうつくしい霊の食器だ。――『霊の食器』
ハチは花を目覚めさせ、ももを針で突く。

