松嶋菜々子

 わたしは山小屋のようなところにいる。そこには素人のもの書きが集まっていて、集会のようなものをやっている。女優の松嶋菜々子がその会の主催をしているのだが、彼女は当然その中では人気実力ともにナンバーワンということになっている。
 わたしは最近その会に入ったようである。そしてどうやら、わたしが松嶋菜々子を追い出すような形になってしまったらしいのである。そんなつもりは少しもなかったのだが、なぜかもうそういうことに決まっていて、わたしと松嶋菜々子とは山小屋の玄関で話をした。でもそこはなぜかわたしの旧家の玄関なのだ。
 松嶋菜々子はちょっと寂しそうに微笑んで、わたしにあとをよろしく頼みますというようなことを云った。わたしは彼女に出て行ってほしくなかった。わたしたちはきっといい友だちになるだろうし、おそらくは、互いに数少ない理解者どうしでもあるだろうから。でも、松嶋菜々子は同じ場所に同じような人間がふたりもいられないというようなことを云うのだ。
 わたしは玄関を出てゆく彼女を見送った。わたしのうしろで、同人会のメンバーが何人か、壁の向こうから顔を覗かせていた。

 ところでわたしは松嶋菜々子についてはいまもってなんにも知らないし、なんのイメージも湧かないのである。わたしが誰を追い出してしまったのか、もっとずっとあとになってわかるのかもしれない。