いまごろとっくに

 最初の夢では、わたしは開けた森のようなところにハイキングに来ている。サファリルックに身を包んだ白人の夫婦と男の子からなる家族が一緒で、わたしは彼らと一緒に目的地へ向かうことになっている。
 森の背後には小高い丘があり、おとぎ話に出てくるような城がそびえ立っている。わたしたちは城を背に、森の中へ進んでいくのである。ハイキングには多くの人が参加していて、みな同じ目的地へ向かうことになっている。
 わたしと白人一家とは一緒に出発するが、わたしは知らない参加者の男性と話したりしながらマイペースに歩いていく。しばらくしてふと、自分が白人一家をかなり後ろに引き離してしまったことに気がついて、引き返すことにする。
 引き返してゆくと、実に多くの人たちが目的地へ向けて歩いているのに気がついた。みなこちらを目がけて懸命に歩いてきて、無言のままわたしとすれ違う。巨人のサンタクロースや鬼も歩いている。わたしはそういう人たちとすれ違いながら白人一家のもとへ戻るが、わたしの姿を見ると奥さんが目を丸くして、あなたどうして戻ってきたの、こんなことしなければ、いまごろもう目的地へ着けたはずじゃないの、と云う。だがわたしは別にひとりで先へ行ってもしようがないと思ったし、そんなことをしてもつまらないと思ったのである。

 次の夢では、わたしは家族や親戚と鉄板料理の店らしきところで会食をしている。長いテーブルの真ん中には鉄板が設えてあり、そこでなにか焼いたりして食事したようであるが、もう食事はほとんど終わっている。
 そこへ店員がやってきた。店員はこの店の料理はココナッツでできていることを説明し、ココナッツの実のさばき方などをわたしたちに説明する。話しているうちに店員はだんだん興に乗ってきて、実演して見せてくれたり、鉄板でなにか焼きはじめたりする。が、わたしたちの会食の予定時間はもう終わっているので、近くを通りかかった先輩らしい店員も、こちらを気がかりそうに見、店員に向かって次の予約があるんだからねというようなことをほのめかす。だが店員はわかってます大丈夫ですというようなことを云って、いつまでもわたしたちを解放しようとしないのである。
 やがてとうとう時間切れになり、店員はまた明日も来てくれというようなことを云う。しようがないので、わたしたちは翌日も同じ店に向かい、この店員のもてなしを受ける。

 白人を置いていったら、たしかにわたしはとっくに目的地についていたろうし、とっくにもっとすばらしい境地に達していたかもしれないのだが、しかし洋の東西のうち最初からもっている片方だけを偏寵して、もう片方はすこしも顧みないというのは、やっぱりバランスを欠く態度に思われてならない。森を歩むに際して、たしかに白人家族など待っていたら時間を食うばかりというのは一面事実であるかもしれないが、しかしやっぱりわたしはできることなら白人家族も巨人も鬼もみんな一緒に森を進みたいと思うし、そうでなければ情を解さない人になってしまいそうな気がする。