わたしは女性数人のグループの中にいて、なにか習い事をした帰りである。わたし以外の人たちはみんな専業主婦で、だから昼どきに優雅に習い事などできるというわけである。わたしたちは仲がいいというより、一緒に習い事をしているうちになんとなくつるむようになったようである。
そのグループのリーダー格の女性が、もし時間があるなら、面白いところがあるからこれから行ってみようという。このリーダー格の女性は、わたしが小学校のときの同級生に似ていなくもないが、よくわからない。ショートヘアで、大ぶりなピアスをつけている、さばさばした感じの細身の女性である。
わたしたちはリーダーに連れられて自然豊かな道を歩き、大きな道場のような建物の前についた。ずいぶん由緒ある建物らしく、門の木が古くなって黒ずんでいる。中に入ると、広い道場があり、おもての純日本建築といったたたずまいとは違って、むき出しの蛍光灯を並べた照明、つるつるした赤っぽい床、白い有孔ボードの壁など、なんとなく昭和の公民館を思わせるような内装である。
道場の中央に袴姿の男がひとり座っており、壁にはなにか習字で描いた教訓のようなものが貼られ、男の背後にある大きな黒板には、少々不穏で思わせぶりな書体で「記」とかなんとかいくつか漢字が書いてある。
その男は師匠というか先生で、これから講義をするから是非聞いていってくれという。そのころにはわたしはもうここが、なにやら宗教がかった道場であることに気づいていた。だがわたしたちを連れてきたリーダー格の女性は男の前に正座してじっと待っているだけで、説明もなにもしてくれない。その場にはわたしたちのほかにも何人かの人たちがいて、一列になってその男の前に並び、講義がはじまるのを待っている。そのうちに、これまた袴をはいた小柄な眼鏡の男が入ってきて、小さな冊子のようなものをみんなに配った。くれるのかと思ったら、裏にちゃんと220円と書いてあって、みんなすぐに男に金を払ったが、わたしはまずは読んでからだと思い、本をぱらぱらやりだした。内容はおぼえていないが、まあ220円ならいいかと思ったころには、もう講義がはじまっており、わたしは金を払うために中座して、道場を出て行った。
道場に沿った廊下を歩いて行くと、左手に背の低い木戸があり、その向こうに例の眼鏡の小男がいて、誰か別の女性と話をしている。わたしは財布から金を取り出そうとしたが、あいにく100円玉がなくて、1020円出したが、わたしが金を出したら、そこにいた女性も同じタイミングでお金を出し、しかも男は女性となにやら話しながらろくに注意も向けないで金を受けとった。わたしはこの男はちゃんと20円のあることに気づいたかしらと思って、疑り深い気持ちで釣り銭を待っていた。
そうしたら、その男は釣り銭を全部10円とか5円とか1円とかで返してきて、わたしの手のひらいっぱいに小銭の山を置いた。なぬ、とわたしは思い、それらをみんな数えたら、ちゃんと800円あるのだった。
小柄な男や、その人と話していた女性はいつの間にかどこかへ行ってしまい、わたしは講義が終わるまで、その小さな部屋で、一緒のグループにいるもうひとりの女性と話をしていた。この女性はグループのメンバーのなかでは一番地に足のついた人で、話も退屈でないのである。やがて講義が終わったらしく、わたしたちは帰ることになったが、道場にはもう次の講義を聴く人たちが一列に並んでいて、講義を担当する男が、また次回来て、ぜひ入会してくださいと云った。

