わたしは学校の旅行かなにかで、大勢の生徒たちとともに家の前で出発を待っている。冬で、風が強く、雪が交じっている。生徒たちはみんな制服のうえに紺色のダッフルコートを着て、寒そうに足踏みしたり話をしたりしながら待っている。
そこへ、今日これから向かうはずの旅館の男がやってくる。小柄な、猪首の、髪をきっちりわけて整髪剤でなでつけた男だ。整髪剤のために、黒髪がぴかぴか光っている。その男が云うには、今日は皇室の関係者を泊めるため、みなさんの予約はキャンセルになったという。その旅館は皇室御用達として有名な旅館で、われわれはみんなそこへ泊まるのを楽しみにしていたのである。落胆の声が上がり、生徒たちはいっせいに不満をわめきたてはじめる。旅館の男は不満げな生徒たちのあいだを縫って、なぐさめるように声をかけてまわった。
「ですが、皆さん、三名分だけ空きがあります。三人だけならお泊まりいただけます」
男はわたしの前を通るとき、そう叫びながらわたしに目配せしてよこした。わたしは旅行中、ちょうど三名のグループで行動することになっており、この男はわたしたちだけ特別に泊めてやると云っているのである。
次の場面では、わたしたちは旅館のなかにいる。わたしと、友人のRと、もうひとりは知らない女性だが、同級生のようである。
旅館はすばらしい木材でできていて、男湯が一階にあり、女湯は建物の中央にそびえるピラミッド型の階段の上、長い階段をのぼった上にある。なんだかアステカ文明の神殿を思わせる。客室はすべて地下にあり、この大階段の下にあるのだ。
わたしたちはさっそく女湯に入りに行くが、脱衣所は人でごった返している。皇室関係者というから皇族の人たちなのかと思っていたら、どうやら宮内庁関係の職員たちらしくて、みんな素っ裸で(脱衣所だから当たり前だが)、人によっては毛むくじゃらのすねや脇を丸出しにして、下世話な話ばかりしている。そのくせ、自分たちは公務員で皇室関係者だということに、なにか滑稽なほどの自覚と自負を抱いているのである。わたしたちは深く幻滅し、なんとなく恥ずかしいような気さえする。

