空を泳ぐ魚

 わたしは母の実家にいた。
 一階で祖父に会い、わたしは二階へ上がった。広間の壁に絵がかかっていた。大きな絵で、青空のような色をバックに美しい赤と白の錦鯉のような魚が泳いでいるのだ。これは誰の絵だと誰かがわたしに訊いてきた。その瞬間までわたしはそんな絵を見たこともなかったが、口からは答えが出ていた。なんとかいう日本画家の名前をわたしは口にし、その作風についてなにか知ったようなことを云った。ほんとうはなにも知らないのだが、その絵を見ているうちにわかったのである。
 魚は水の中を泳いでいたのではない。それは空を泳いでいたのだ。わたしには確信があった。この魚は確かに空を泳いでいるのだと。