わたしは小型のバスに乗って山奥の集落へ向かっている。それは修学旅行か研修旅行かなにかで、バスの中にはほかにも何人もの人がいる。
その集落は、昔どこかから逃げのびてきたユダヤ人が隠れて住んでいた集落だという。一見したところ、山奥のひなびた温泉街のように見える。旅館のような、洋館のような、不思議な建物がくねくねした山道沿いに並んでいる。
わたしたちはバスを降りて、旅館に宿をとる。それから周辺の散策に出かけるのだが、わたしはどうもたいへんなコースを選んでしまったらしくて、長々と続く、人一人這って通るのがやっとな洞窟の中をずっと這い進んで行くのである。目的地へは、その産道のような狭くて暗い洞窟を通りぬけるよりほかに道がないらしい。
わたしは湿った灰色の岩に囲まれた、狭苦しい細い通路を虫のように這いながら進んでゆく。前か後ろに這い進む以外にまったく身動きがとれない。体を回転させることも難しい。そんな通路を、わたしたちは何百メートルも進んでいくのである。
わたしのうしろには何人かの人がついてくる気配があり、列の一番後ろに引率者の男性がいることはわかっている。が、なんといってもわたしは列の先頭を進んでいるのである。どうも怖いし、洞窟は終わりが見えないし、わたしは何度もうしろを振り返ろうと思うが、あまりにも通路が狭いのでそれさえも難しいのである。
やがてわたしは行き止まりにたどり着いた。本来はそこに出口があるはずなのだが、その出口はなんと閉じてしまっていて、手のひら一枚がかろうじて入るような細い隙間があるばかりなのだ。わたしはびっくりし、そこへ手を差し入れてどうにかならないか確かめてみた。が、どうしようもないのでとうとう振り返って引率者を呼んだ。
そのとたん、出口の細い隙間からなにかがばらばらと落ちてきた。それは明らかに素人が印刷屋に頼んで印刷した、文庫サイズの本であった。
次の場面では、わたしは旅館の部屋のようなところにいる。畳敷きの部屋で、今日はここに泊まるようである。ここでのわたしはどうやら悪の組織から世界を守る組織の一員らしいのだが、そういう自分に疑問を抱いているようである。
ふいに、目の前にひとりの老人と幾人かの若い人たちがあらわれて、わたしを悪の組織に勧誘しはじめた。どういう経緯だったか詳しくは忘れたが、わたしはそれに同意し、そのとたん、わたしの体は黒い戦闘服のようなものに包まれた黒人の女に変わっていった。
その老人はわたしに武器を与え、わたしはそれを受けとる。鋭く長い二本の串のようなものが、剣の柄のようなものにくっついているのである。いまやわたしは解放感でいっぱいである。やっと自分にふさわしい自分自身になったような気持ちなのである。
そしてわたしは老人から、ある部屋の一室で、かつての仲間を殺す任務を与えられる。その部屋には正義の組織の人たちがひとりずつやってくることになっていて、わたしはその部屋で待ち構えていて順番にその人たちを殺していくのである。
その部屋に移動するためには、なぜか冷蔵庫の中の通気口のような、ファンのようなところに吸い込まれて行かねばならない。冷蔵庫の中に身を乗り出して、庫内の上部に取りつけられたファンのようなところへ頭を差し出すと、わたしの頭はそこへするりと吸いこまれ、目的地へ行けるのだ。
だがわが冷蔵庫君にはAI知能かなにかが埋めこまれていて、冷蔵庫君はなぜかわたしのダイエット計画について心配している。それで、いついつまでにこのような体重になるためにはどのような計画に従ってなにを食べていけばよいか示してくれるのだが、わたしは急いでいてそんなくだらないことにかまっているひまがないのである。それで冷蔵庫君がせっかく掲示してくれている計画書を無視して、ファンの部分に頭をつっこむ。にゅるりと変な感触がして、わたしは中へ吸いこまれた。
次の場面では、わたしは指定された部屋に到着している。そこは畳敷きの小さな、きれいな部屋である。壁はしっくいのようだが、きれいな緑がかった色をしている。畳の緑と合わさって、緑の間とでも呼べるような部屋である。
わたしは部屋に入ってくる人たちに自分の姿が見えないように物陰に隠れ、例の武器を握りしめて、正義の味方がひとりずつ到着するのを、息を殺して待っている。

